面積とは,広さをあらわす量のことです.ここでは,広さをあらわす方法と,その計算方法について説明します.
長方形・三角形の面積
平行四辺形・台形の面積
多角形の面積と図形の分割
Σによる簡単な計算
はじめに,もっとも簡単に面積を考えられる長方形・三角形の面積について考えます.すでに計算方法を知っている人も,面積の考え方を復習するために,軽く読んでおくことをおすすめします.
┌┐ └┘
この正方形Aと,
┌─┐ │ │ └─┘
この正方形Bの広さ(大きさ)を比べることにします.正方形AとBを,左上をそろえて重ねると,
┌┬┐ ├┘│ └─┘
このようになって,Bの方が大きいことがわかります.
この「大きい」「小さい」を,もっとくわしく調べることにします.
Aと同じ正方形をいくつか用意してBにきれいに重ねてみましょう.
┌┰┐ ┝╋┥ └┸┘
じつは,4つのAがちょうどBに重なります.
このように,Bの正方形1枚を埋めるために,Aの正方形が4枚必要なとき,
と書くことにします.この式は,
という意味です.この「広さ」のことを面積と呼びます.
同じように,長方形Cが
┌───┐ │ │ └───┘
こんな形だったとします.このとき,はじめの正方形Aを使うと,
┌┰┰┰┐ ┝╋╋╋┥ └┸┸┸┘
このように,ピッタリしきつめることができるので,
と書きます.また,Aの代わりにBを使えば,
┌─┰─┐ │ ┃ │ └─┸─┘
このように重ねることができるので,
とも書けます.
さて,日常生活では,いろんな図形の広さを「縦・横の長さが1cmの正方形」によって表すことがあります.
縦・横の長さが1cmの正方形には,cm2 という名前をつけます.
cm2 は「へいほうセンチメートル」と読みます.
同じように,縦・横の長さが1mの正方形にはm2という名前がついています.
m2 は「へいほうメートル」と読みます.
例:縦の長さが2m ,横の長さが3m の長方形Dがあったとき,この長方形の面積を求めてみます.
┌┰┰┐ ┝╋╋┥ └┸┸┘
この図の小さい正方形の辺を1m と考えると,縦・横1m の正方形が6つあるので
となります.
cm2 や m2 を使って面積を考えるとき,いちいち正方形を重ねるのは手間がかかります.
そこで,かんたんな計算の方法を考えます.
縦の長さが3m ,横の長さが6m の長方形Aがあったとします.このとき,長方形に1m ごとに真っ直ぐに線を引くと,
┌┰┰┰┰┰┐ ┝╋╋╋╋╋┥ ┝╋╋╋╋╋┥ └┸┸┸┸┸┘
上下に3つずつ,左右に6つずつのマスができます.
そこで,これを数えるときには掛け算を使って
という計算をすれば,
となります.
このように,長方形の縦の長さと横の長さが分かっていれば,その面積は
によって計算できます.これはどんな長方形でも成り立つ計算式です.
1m2が何cm2になるか,考えてみます.
だったので,
ということになります.
ところで,逆に1cm2は何m2であると言えばよいでしょうか?
1cm2が10000個で,1m2ですから,逆に言えば1m2を10000個に分けたうちの1つ分が1cm2ということです.
この「10000個に分けたうちの1つ分」のことを
と書くことにすると,
と書くことができます.この 1/10000 のような形で表現される数のことを,分数と言うのでした.
(PCでは分数を表示するときには,1/10000 のように/の左に分子を,/の右に分母を書くことがあります.普通の分数は,-の上に分子を,下に分母を書くのでした.)
面積を表現するときには,このように分数を用いる場合もあります.分数の計算方法については,「やさしいすうがくのうた」などを参考にしてください.
/| / | / | 4cm /___| 2cm
このような形をした直角三角形Aがあったとします.
Aの縦の辺の長さは4cm,横の辺の長さは2cmだったとしましょう.
このとき,Aの面積は何cm2になるでしょうか.
上の直角三角形を2枚用意して,うまく組み合わせることで,
____ | /| | / | | / | 4cm |/___| 2cm
このような長方形Bを作ることができます.Bの面積は,
です.いま,Bの面積はA二枚分なので,Aの面積はBの半分で
と考えられます.
直角三角形の面積は,このように
で計算できます.
ただし,この「たて・よこ」というのは,垂直に交わる2つの辺のことを言います.
直角三角形には3つの角がありますが,垂直な角以外では,この計算方法は使えません.
たとえば,直角三角形Cが
/| 5cm/ | / | 4cm /___| 3cm
右の辺が4cm,下の辺が3cm,左上の辺が5cm
という三角形だったとすると,垂直な角は右下の角だけなので,
C=5×4÷2 cm2 とか C=3×5÷2 cm2 というのは間違いです.
正しい計算は,右の辺と下の辺の積を取って
となります.直角三角形の面積を計算する場合,二つの辺が垂直に交わるか,注意しましょう.
今度は,直角三角形以外の一般の三角形について考えます.
結論をはじめに言っておくと,
となるのですが,以下詳しく説明します.
/ \ / \ / \ / \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
このような三角形Aがあったとします.この三角形の面積を考えます.
図の上に書いてある頂点から,向かい合う辺に向かって垂直に線を引いてみます.
/|\ / | \ / | \ / | \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
そうすると,三角形Aは,2つの直角三角形の合わさったもの,と考えることができます.
いま,この三角形の下の辺の長さが7cmで,新しく引いた垂直な線の長さが6cmだったとします.
ここで,直角三角形の面積を考えたときのように,もう1枚ずつ同じ直角三角形たちを用意すると,
_____________ | /|\ | | / | \ | | / | \ | |/ | \|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
このような長方形を作ることができます.この長方形の面積は
と計算できるので,元の三角形Aの面積は,この半分の
と計算できます.
さて,この方法で三角形の面積を計算するとき,重要なのは,
「下の辺の長さ」と「頂点から下ろした垂直な線の長さ」です.
この「下の辺の長さ」のことを,底辺(の長さ)と呼ぶことにし,
また「頂点から下ろした垂直な線の長さ」を高さと呼ぶことにすれば,
一般の三角形の面積は
と表現できます.
この場合で重要なのは,直角三角形の場合と同じく,垂直に交わることです.
たとえば,
A |\ | \D | /\ | / \ | / \ |/ \ B  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄C
この図において三角形△ABCの面積を考えるとき,ACを結ぶ線分とBDを結ぶ線分は垂直に交わっていないので,ACの長さ×BDの長さ÷2を計算しても正しい面積になりません.
高さは底辺から垂直にはかると覚えておきましょう.
※2つの線分の交わり方が垂直でないときは,三角比 sin を用いて計算することができます.
さて,世の中の図形は,長方形と三角形だけではありません.他の図形の面積を求めるために,少しずつ計算を応用していくことにしましょう.
中心となるのは,図形を三角形に分割する方法や,あるいは同じ図形を組み合わせるといった方法です.
はじめに,今回考える図形についての結論を述べておくと,
となります.これからその理由・考え方を説明していきます.
これらの「公式」を覚えている人もいると思いますが,「なぜこの計算式になるのか説明できない」という人には一読をおすすめします.飛ばす場合は次の多角形の面積へどうぞ.
平行四辺形とは,2組の向かい合う辺が,それぞれ平行な四角形のことです.
___ \ \ \ \  ̄ ̄ ̄
このような図形が平行四辺形の例です.上の辺と下の辺は平行で,左の辺と右の辺も平行です.ここで,平行四辺形の底辺と,底辺に対応する高さを次のように定めます.
___
\ \ ↑高さ
\ \↓(垂直に測る)
 ̄ ̄ ̄
←─→ 底辺(の長さ)
さて,この平行四辺形の面積を求めることを考えます.
この図形に斜めに線を入れてやると,
___ \ /\ \/ \  ̄ ̄ ̄
このように2つの三角形に分割することができます.したがって,この2つの三角形の面積が分かれば,平行四辺形の面積も分かります.この2つの三角形は実は同じ形をしているので,片方の三角形の面積の2倍が平行四辺形の面積です.さて,
/\ ↑高さ / \↓(垂直)  ̄ ̄ ̄ ←─→底辺
だったので,平行四辺形の面積は
となります.
例:底辺が 4cm,高さが 2cm の平行四辺形の面積は
と計算できます.
※垂直でない場合は,やはり三角比sinを用いて計算します.
台形とは,少なくとも1組の向かい合う辺が平行な四角形のことです.
__ / \ / \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
この四角形は,上の辺と下の辺が平行なので,台形です.この例の場合,左の辺と右の辺が平行でないので,平行四辺形にはなっていません.
台形の上辺と下辺を,それぞれ上の辺と下の辺のことと定めます(そのまま).また,台形の高さを,上辺・下辺に対して垂直に測った幅とします.
上辺
__
/ \ ↑高さ
/ \↓(垂直)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
下辺
さて,ここで,同じ台形をもう一つ用意して,逆さにして組み合わせてみましょう.
_______ / \ / / \ /  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
このように,大きな平行四辺形ができました.この平行四辺形の底辺(の長さ)は 上辺+下辺 なので,
台形の面積×2 = 大きな平行四辺形の面積 = (上辺+下辺)×高さ
と計算できます.大きな平行四辺形は台形2つ分なので,台形の面積はその半分となり
と計算できることが分かります.
例:上辺が 7cm,下辺が 5cm,高さが 4cm の台形の面積は
と計算します.
さて,平行四辺形の面積と台形の面積を求めるにあたって,
という方法を用いました.
ここで,直角三角形の面積を求めた時のことを思い出してみます.同じ直角三角形を2つ用意することで,面積が長方形の半分であると考えたのでした.
また,もっとさかのぼって考えると,長方形の面積の説明をしたときは「たて・よこ1cmの正方形何枚分になるか」を考えたのでした.
これらの例に限らず,他にもいろんな図形の面積を考える場合において,「分割」と「組み合わせ」を考えることがとても大切になります.
その例として,次のような図形を考えてみましょう.
例:
/\ ↑2cm / \↓ │ │ │ │ 4cm │ │ └───┘ 5cm
図の五角形の面積を求めようと思った場合,次のように2つのパーツに分割します.
/\ ↑2cm / \↓  ̄ ̄ ̄ ̄ ____ │ │ │ │ 4cm │ │ └───┘ 5cm
そうすると,三角形と長方形になるので,それぞれ面積を求めると
となり,五角形の面積は合計して
と分かります.
この方法を踏まえると,いくつかの線分で囲まれた図形(多角形と呼ばれる)の面積を求めるためには,
____ / \ / \ | \ | \ \ / \ / \ /  ̄ ̄ ̄ ↓ /| | ̄ ̄| | ̄ ̄| |\ / | | | | | | | |\ | | | | | | | | | \ | | | | | | | | | \ \| | | | | | | | / \ | | | | | | / \| |__| |_| |/
このように,適当な台形や三角形に分割して,それぞれの図形の高さや底辺・上辺・下辺などを測れば,面積を計算することができます.
分割の方法はひとつではないので,他にも
____ / \ / \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ _______ | \ | \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ _________ \ / \ / \ /  ̄ ̄ ̄
こんな風に分割することもできます.分割のしかたによって,計算の方法も少し異なりますが,このようにして多角形の面積を計算できます.(ただし,各パーツの底辺・上辺・下辺・高さなどの長さを測定する必要がありますが.)
今述べた「分割して計算する」方法によって,
と書くことができます.これを数学っぽく,記号を用いて書くと
となります.
このΣというのはシグマと読みます.略記のために「合計」→「Σ」と置き換えて,文の先頭に持って来て,Σ分割した図形の面積 と書いています.今後,Σは「合計」「和」を表す記号として用いられます.
さらに記号を使った記述を紹介しましょう.いま,最初の多角形を5つの図形に分割したとします.このとき,5つの図形(の面積)が,それぞれA,B,C,D,Eだったとすると,
と書くことができます.
ところで,今度は別の図形を30個に分割したとします.30個の図形にA,B,C,…と別の名前を付けていくと,大文字のアルファベットでは数が足りず,面倒です.
そこで,S1,S2,S3,…,S30と名前をつけることにすると,
となります.この式の右辺は,Sの右下についた数を1つずつ変えて足すことを繰り返しています.このことを,Σ記号を用いて次のように書きます.
もう少し詳しく説明すると,
とΣ記号の意味を定義しておきます.
このようにΣを使って表現しても,最初は何のことかよく分からない場合もあると思います.また,実際に,Σを使って表現してもメリットがない場合や,分割以外の方法で簡単に面積を求められる場合もあります.上で用いた例の図形については,Σを用いることには略記程度の意味しかありません.
しかし,
という事情があるので,今後のためにΣという記号を導入しておきます.
Σの計算は,面積に限らず他の場面でも広く用いられるものです.Σの一般的な計算方法については別のページで述べるとして,ここでは簡単な場合についての説明をします.
例題(重要!):次のような6段の階段形の図形の面積を求めよ.ただし,一段の高さは1cmとする.
┌┐ │└┐ │ └┐ │ └┐ │ └┐ │ └┐ └─────┘
分割を用いた解答:はじめの図形を次のように分割する.
┌┐ ├┴┐ ├─┴┐ ├──┴┐ ├───┴┐ ├────┴┐ └─────┘
上から順に,面積をS1,S2,…,S6とおく.このとき,(単位を省略すると)S1=1,S2=2,…,S6=6で,求める面積は
より21cm2であることが分かる.(解答終)
注意:これはΣを用いて書くとΣi=16 i と書くことができます.
分割を用いない解答:もうひとつ同じ図形を用意して,ひっくり返して組み合わせると,
┌─────┐ ┌┐└┐ │ │└┐└┐ │ │ └┐└┐ │ │ └┐└┐ │ │ └┐└┐│ │ └┐└┘ └─────┘ ↓ ┌┬─────┐ │└┐ │ │ └┐ │ │ └┐ │ │ └┐ │ │ └┐│ └─────┴┘
この大きな長方形の面積は,6×7 cm2=42cm2なので,階段形の面積は
と計算できる.(解答終)
では,これが6段ではなく,100段の場合ではどうでしょうか.
以下,単位を省略することにして,分割を使わずに組み合わせる方法で考えると,100×(100+1)の大きさの長方形ができるので,
と考えることができます.
さて,面積はこれで計算できるのですが,上の分割を用いる方法で考えれば
と考えることもできました.このことから,Σに関する式
が成り立つことが分かります.今は6段と100段でだけ考えましたが,1000段でも10000段でも489621段でも,同じように計算できます.そこで,段の数がnの階段形の面積について同様に考えれば,
という関係が成り立ちます.この式は非常に重要です.
ここで,もう一つ「明らかな」計算を紹介しておきます.
例題:次のような形をした,高さncm,横1cmの塔の面積を,上と同じように1cmずつ分割して,Σを用いて表せ.
┌┐ ││ ││ ││ ││ ││ └┘(図はn=6)
解答:
┌┐ ├┤ ├┤ ├┤ ├┤ ├┤ └┘(図はn=6)
と考えると,常にSi=1なので,上の例題と同様にΣを用いて表せば
と書ける.(解答終)※Σの「中身」に i が出てこない!
この例題から,
が成立することがわかります.
注意:わざわざnをΣで書いて下らないことをしているように見えますが,この関係式は今後意味を持つので注意しておきます.
ここでは
のように,「Σの中の定数を外に出せる」ことを説明します.ただし,a はΣで動かす変数(この場合で言う i )とは関係ない定数です.
さて,次の問題を考えます.
例題:次のような5段の階段形の図形の面積を求めよ.ただし,一段の高さは1cm,横幅を2cmとする.
┌─┐ │ └─┐ │ └─┐ │ └─┐ │ └─┐ └─────────┘
分割による解答:
┌─┐ ├─┴─┐ ├───┴─┐ ├─────┴─┐ ├───────┴─┐ └─────────┘
このように分割すると,S1=2,S2=4,…,S5=10で,求める面積は
である.(解答終)
これで答えは分かりましたが,別の計算方法について考えましょう.まず,上の式は,Σを用いれば
と書けることに注意しておきます.
この問題の図形は,以前の階段を横に2倍に引き伸ばしたもの,とも言えます.そうすると,この図形の面積は
┌┐ ┌┐ │└┐ │└┐ │ └┐ +│ └┐ │ └┐ │ └┐ │ └┐ │ └┐ └────┘ └────┘
と等しいと考えられるので,
このような計算の仕方もできます.これを少し大げさに書けば,
となります.このように,2つの求め方を考えれば,
という関係が成り立つことが分かります.
これは,例えば5段を80段にしてみても,一つの段の横幅が2倍の場合は
と計算できます.一般に,段の数が n のときは
となります.一般に,幅が2以外の場合も,同じように計算できます.
例題:一段の高さ1cm,横幅6cm,10段からなる階段型の図形の面積を求めよ.
解答:上と同じように,通常の図形の6倍と考えれば
と計算できる.(解答終)
この計算方法は,どんな横幅についても用いることができます(横幅が分数などでもよい!).つまり,一般にΣについて
が成り立ちます.そこで,Σiの計算の仕方を覚えておけば,Σaiはそれをa倍するだけで求まる,ということになります.この計算方法は重要なので,覚えておきましょう.
ところで,同じようなことがΣaの計算についても言えます.一見ばかばかしい計算ですが,次も重要です.
例:高さn cm,横幅a cmの長方形がある.これを,(1)高さについて1cmずつに区切りΣの式を作る方法と(2)高さn cm,横幅1cmの棒の面積のa倍と考える方法の2通りの方法を考えると,
が成立する.
ここでの目標は,
のようにΣを「分解」できることを説明することです.この性質はΣの線形性と呼ばれますが,これについて詳しく説明していきます.